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ダライ・ラマ法王 Teaching | |
ダライ・ラマ法王による説法会が開かれたのは2010年11月11日。
翌日から広島で開催された第11回ノーベル平和賞受賞者世界サミットに伴い特別に企画された説法会でした。
主催である“ダライ・ラマ法王Teaching 2010 in Hiroshima”からお声をかけて頂き、今回の説法会で私がオフィシャルカメラマンを務めることに。
当日、私は会場である広島市文化交流会館に朝8時入り。法王による説法会は午後2時からだというのに、舞台裏ではスタッフの方々が右往左往しながら大声を張り上げ、すでにステージ準備が始められていました。
会場の照明は落とされスポットライトが玉座だけを照らし、さらにはステージにたかれたスモークと今回の説法会のために特別に製作されたチベット音楽が低音で流れ、まるでチベットのゴンパ(寺院)にでも来たような神秘的な雰囲気でした。
これまで見てきた他の地の法王による講演会場より、チベットらしさが出ていました。
広島は日本でもチベットに縁がある地。やはり広島の舞台は違うでしょという主催者のこだわりを感じました。
ステージの用意と平行して会場入口では物販コーナーが作られていました。
今回の説法会を記念して、私と主催者が一緒に製作したチベットの公式カレンダーも販売。その他にも
“松尾純”専用のブースがあり、広島で活動するチベット写真家として宣伝して頂きました。
決して大きくないエントランスホールが大賑わい。
地元広島でこういう光景を見ると、チベットに関心を持っている人がこんなにいるのかとうれしい気持ちになります。
法王による説法会の前には日本法要が営まれました。
開場して1時間の間、お客さんや日本の僧侶さんたちすべての人が法王のご入場を今か今かと待ちわびていました。
午後2時、ステージが一瞬せわしくなったと同時にダライ・ラマ法王ご入場。
親しみのある笑顔で手を合わせ、会場の四方八方に挨拶をしておられました。丁寧に何度も何度も。
玉座に上がられてからもさらにその挨拶は続いていました。
いよいよ説法開始。
今回は“輪廻と業果〜過去・現在・未来と「私」を見つめる”について。
法王は英語もお話しになりますが、今回はチベット語による説法。
玉座の側に座っていた3人のチベット語通訳さんが、法王のお言葉を聞きながら、同時に手元でそれを速記、一区切りすると会場に向けて日本語で訳すという作業をしておられました。
あいにく私は撮影のため、説法をじっくり聞くことが出来ませんでしたが、会場のお客さんも僧侶さんたちも話を聞く姿は真剣そのもの。
私が何より気をつけていたのは、説法を聞くお客さんの視界になるべく入らないこと。
好きに動き回れるオフィシャルカメラマンといえども、大切なお客さんの邪魔になるような行為が目に付けば、法王より直接ご注意されることがあるらしい。
長年法王のカメラマンをしてこられた写真家さんにそうご忠告を受け、はっきり言ってかなりびくびくしながら撮影していました。
お客さんの前を通る時はほふく前進をするように床に這いながら移動し、音を立てないようにつま先だけで歩き、物陰に時々隠れ、シャッターは構図・露出などを決めてワンシーン1回だけ切るようにしていました(シャッター音を防ぐため)。
もちろんスピードライトなんてタブーです。
法王はお歳のため目が弱く、光に敏感なので絶対に使ってはいけません。
約2時間に及ぶ説法が終了。
ステージ上の僧侶さんや関係者が法王をお見送りする体制になり、私にもラストスパートがかかりました。これまで控えめに待機していたカーテン裏からステージ中央に出ていき舞台を後にする法王を撮影。
お見送りする人の間を抜けて私の方に歩いて来られた瞬間、僧侶さんにまぎれて私もつい手を差し出してしまいました。
そしてしっかり握手。初めてのことに感極まり、落ち着いてからその手がとても柔らかかったことに気付きました。
握手出来たからと言って余韻に浸ってはいられない。
主催者からここは撮ってあげてと頼まれていた大仕事が残っていたのです。
それは法王と特別施主の方々との謁見風景。
法王を追い越し、駆け足でステージ出口に向かいました。
チベット文化圏では、高僧との謁見時にカタと呼ばれる白いスカーフを挨拶しながら相手に渡す習慣があります。カタを相手に渡すことは、自分の心からの敬意を表すという挨拶の印。
特別施主の方々は、法王が説法を終えられる少し前からカタを両手に握り締め、緊張した面持ちでステージ出口に待機しておられました。
いよいよ法王がお姿を現すという時、皆さんの背筋がピンと伸びた気がします。
いきなりのことに戸惑いましたが、謁見がすぐ始まったのでそんな思いも一瞬でした。
あとは夢中でシャッターを切るのみ。
しかし一人一人と挨拶されるスピードがとても速く、後ずさりしながら撮影する私はいつこけてもおかしくない状況でした。
法王とカメラとの撮影距離が近すぎ、シャッターを切れないくやしい思いを何度もしました。
実力不足です。
そしてそんな中でも私は、法王が特別施主の方々との挨拶を終えられた瞬間、ついまた手を出してしまい、2回目の握手をさせて頂きました。ちゃっかりしています…。
それを撮影していると、側にいたSPの方々の視線が集まり恐かったです。
何も注意されなかったのは、首から提げたオフィシャルスタッフパスと腕に付けた特別プレスパスが効力を発揮してくれたから。
この日、法王は四国からヘリでご到着予定でしたが急遽お車での来広となりました。
ご体調が優れず、長距離移動の後休む間もなく説法会というハードスケジュールの中で、お疲れになった顔一つ見せず、最後まで笑顔で丁寧に挨拶される姿に感銘を受けました。
これより数日後、お忍び同然で関係者が法王のお泊りになっていたホテルに集まりました。
法王が広島を去られるお見送りでした。
早朝5時45分、ホテルのロビーで法王を待ち一列に並んだ皆の手には真っ白いカタ。
今度は私も撮影した後で法王にカタを渡し挨拶出来るはずでした。
しかし飛行機の時間もあったのか法王はお急ぎで、説法会のご退場時よりもっと速いスピードで挨拶をされ、あっという間にホテル外へ出られてしまいました。
寂しいですが多忙なお方なので仕方ないです。
お見送り後、あまりに一瞬の出来事だったので皆呆然としましたが、法王の笑顔は変わらず、車の窓からいつまでも手を振っておられたことはしっかり覚えています。
ダライ・ラマ法王が広島に来られオフィシャルカメラマンを勤めさせて頂いた数日間、ステージ上だけではなくいろいろな場面に接することができ、とても貴重な経験をさせてもらいました。
撮影においても、あの緊迫感の中写真を撮ること、周りの状況に合わせて臨機応変に動くこと、そして結果を残すのが前提だったこと、環境も被写体もいつもの旅での撮影とはまったく異なり、反省点も含めいい勉強になりました。










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